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腎臓のお話:トリプルワーミーについて

【トリプルワーミーとは】

「トリプルワーミー」とは、
ある3種類の薬を同時に服用することで、腎臓の働きが急に悪くなりやすくなる 危険な組み合わせのことです。

問題となる3つの薬は以下です:

薬の種類代表例作用の特徴
1. ACE阻害薬 または ARBロサルタン、バルサルタン、エナラプリル など血圧を下げる薬。腎臓の血管を広げる。
2. 利尿薬フロセミド、ヒドロクロロチアジド など体の水分を出して血圧を下げる。
3. NSAIDs(痛み止め)ロキソニン、ボルタレン、イブプロフェン など痛みや炎症を抑えるが、腎臓の血流を減らすことがある。

この3つを一緒に服用すると、
腎臓に入る血液が減り、さらに水分が少なくなり、腎臓が強く負担を受ける 可能性が高まります。


【どんな時に危ないのか】

  • 脱水しているとき(発熱、下痢、飲水量が少ないなど)

  • 夏場や運動で汗を多くかいたとき

  • 高齢の方

  • もともと腎機能が低い方

このような状況では、急性腎障害(急に腎臓が悪くなる状態)を起こしやすくなります。


【急性腎障害(AKI)について】
腎臓に入る血液の量の減少により、薬を服用した当日~数週間の短期間で急激に腎機能が低下する状態を言います。

主な症状としては、

・尿量減少

・浮腫

・食欲低下

・悪心(吐き気)

・全身倦怠感

   などがあります。


【よくある実際の例】
血圧の薬(ARB)と利尿薬を普段から飲んでいる方が、
「頭痛や腰痛が出て市販の痛み止め(ロキソニンなど)を自己判断で使用」
→ 数日で腎機能が悪化、というケースがよくあります。


【患者様への注意点】

  1. 痛み止めを自己判断で追加しない
    特にロキソニン、イブプロフェン、ボルタレンは要注意です。薬局・薬店・ドラッグストアなどでお求めの際は必ずお薬手帳をご持参頂き、薬剤師に相談してください。湿布薬を買う時も同様です。

  2. ACE阻害薬(またはARB)と利尿薬を服用されている方で、もし痛みや熱が出たら、医師か薬剤師に必ず相談してください
    代わりに使用できるお薬や養生法をご提案する場合があります。

  3. 適切に水分補給をすること
    適度な水分補給を行うことで尿量を増やし、代謝物、老廃物や細菌を外に出しやすくします。ただし、摂り過ぎにも気を付けて下さい。腎臓に逆に負担をかけたり、浮腫みの原因にもなります。目安としては、1日1400mL~1600mL(湯呑7~8杯)程度です。更に、医師から水分制限がある場合はその指示を優先してください。

  4. 定期的に血液検査で腎機能を確認すること血液検査で腎機能の現状を確認することができます。Scr(血清クレアチニン値)が基準値内に収まっているか否かを見ます。施設にもよりますが、男性:0.6~1.1mg/dL、女性:0.4~0.8mg/dLがおよその基準値となります。気になる方は血液検査の結果をご持参の上、ご相談下さいね。


まとめ
「トリプルワーミー」とは
ACE阻害薬/ARB + 利尿薬 + NSAIDs
を同時に使うことで腎臓を傷めるリスクが高くなる組み合わせです。

痛み止めを使う前に、必ず薬剤師または医師にご相談ください。